学生時代の国民年金は納めた方が良い?
4月から大学などを卒業されて、新社会人になった方が多くいると思います。
国内に住所を有する20歳以上の方は国民年金への加入義務がありますが、学生時代は学生納付特例という保険料の納付を猶予する制度があり、国民年金の保険料を納めていなかった方も多いかと思います。
この納付が猶予されていた期間の国民年金の保険料を後から納めることができるのが追納制度で、追納制度を利用することで将来の国民年金の受け取れる金額を増やすことができます。
追納制度は10年前の免除期間までの保険料を納めることができますが、3年度以降に納めると加算額が発生します。例えば、現在(令和6年)ですと令和4年度の保険料には加算額がありませんが、令和3年度より前の保険料には加算額が上乗せされています。
加算額は大きくありませんが、この点を考慮すると追納制度を利用する場合は早めに利用するのがお得と言えます。
追納した場合の国民年金の増額と、社会保険料控除について次回見ていきたいと思います。
付与基準日の直前に復職した労働者に年次有給休暇5日分を付与しなければならない?
前回は有給を取得させることができない場合は、労働基準法違反にならないことを述べました。では、付与基準日から1年間の途中に休職期間が終了し、職場復帰した労働者についてはどうなるのでしょうか。
この場合は当該労働者の意見を聴取して5日間の年次有給休暇を取得させなければなりません。この点については、育児休業や介護休業から復帰した労働者についても同様です。付与基準日から1年間の期間の途中に育児休業や介護休業を終了し職場復帰した労働者についても、5日間の年次有給休暇を取得させなければなりません。
ただし、復帰後の新たな付与基準日までの残りの期間における所定労働日数が、使用者が時季を指定すべき年次有給休暇の残日数より少なく、5日間全日数の年次有給休暇を取得させることが、実質的に不可能な場合には、可能な日数を取得させることで差し支えありません。
休職明けの年次有給休暇の取得義務について
労働基準法上、年次有給休暇は労働者の雇用形態別にその勤務年数に応じて必要な付与日数が定められています。また、新たに年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者については、付与日から1年以内に5日間(繰越分を含む)について必ず取得させなければなりません。
本来、年次有給休暇は、労働者が請求する時季に与えることを原則としていますが、5日の強制取得義務があるため、当該5日分については、会社が年次有給休暇管理簿を作成して、労働者の年次有給休暇の取得状況を確認し、取得していない労働者については会社が取得時季を指定する必要があります。この取得義務に反した場合には、罰則として違反者1人について30万円以下の罰金適用される場合も有りますので注意しなければなりません。
年次有給休暇と休職の関係について見ると、年次有給休暇とは労働義務のある日の労働義務を免除する制度です。他方、休職とは雇用関係を維持しつつ、配属された所属を離れ、労働義務を免除された状態をいいます。休職制度は必ず設けなければならない法的義務はないものの、ほとんどの会社がこの休職制度を設けています。
このように年次有給休暇も休職もともに、本来の労働日について労働を免除されるものであり、、その関係性において行政解釈では「休職発令により従来配属されていた所属を離れ、以後は単に会社に籍があるのとどまり、会社に対して全く労働義務を免除されることとなる場合において、休職発令された者が年次有給休暇を請求したときは、労働義務のない日について年次有給休暇を請求する余地がないことから、これらの休職者は、年次有給休暇請求権の行使ができないと解する」(昭31.2.13基収第489号)としています。
したがって、例えば、付与基準日が4月1日から1年間またはそれ以前から休職しており、期間中に一度も復職しなかった場合などは、使用者にとって5日取得させる義務の履行ができないことになりますので、これをもって労働基準法違反を問われることはありません。
介護と仕事の両立(5)
これまで解説してきた措置以外に所定外労働、時間外労働、深夜業の制限を求めることができます。
それぞれ対象となる労働者が異なりますので、確認が必要です。
所定外労働とは就業規則等に定められている勤務時間を超える労働で、時間外とは原則1日8時間、1週間で40時間を超える労働、深夜業は午後十時から午前五時までの労働のことを言います。
時間外労働は1か月24時間、1年で150時間を超える労働が制限されます。
例外として事業主は事業の正常な運営を妨げる場合は労働者の請求を拒めますが、事業の正常な運営を妨げるか否かは作業の内容、作業の繁閑、代替要員の配置の難易等の事情を考慮して客観的に判断されますので、安易に労働者の請求を拒否することがないようにしてください。
介護と仕事の両立(4)
介護休業と介護休暇について前回までに解説しましたが、これらと併せて事業主は短時間勤務等の措置を設ける必要があります。
1日の所定労働時間の短縮や勤務しない日を定める短時間勤務制度、フレックスタイム、時差出勤制度、介護サービスの費用の助成のいずれか一つ以上の制度がその対象となります。
対象となる労働者や家族は介護休暇と同様です。
利用期間・回数に関しては対象家族一人につき「3年以上の期間で2回以上」と定められています。
介護休業や介護休暇に比べて長い期間利用することができますので、短時間勤務等の措置も利用することで介護と仕事の両立を図りましょう。
介護と仕事の両立(3)
介護休業と違い、通院への付き添いなど短時間の休みが必要な場合は介護休暇を取得することができます。
対象となる家族は介護休業の場合と同じで、労使協定を締結している場合は入社6か月未満の労働者や1週間の所定労働日数が2日以下の労働者を対象外とすることができますが、原則として対象となる労働者は日々雇い入れられる者以外となっています。
有給休暇とは別に休暇を取ることができますが、有給か無給かは会社の規定によります。また、雇用保険からの介護休業給付のような制度もありません。
休暇を取得することのできる日数は対象家族が一人の場合は年5日、二人以上の場合は年10日までとなっています。
介護と仕事の両立(2)
介護休業は休業期間中に仕事と介護を両立させる体制を整えることを目的として、対象家族一人につき通算93日まで取得することができます。
対象となる家族は配偶者、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫となっています。
介護休業を取得できる労働者は原則として日々雇い入れられる者を除いたすべての労働者となりますが、介護休業の取得予定日から93日を経過する日から6か月以内に契約が満了し、更新されないことが明らかな労働者は含まれません。
例えば、5月1日から介護休業を取得予定の場合、93日後(=8月2日)から6か月以内に更新回数の上限に達し、更新されない労働者に対しては介護休業を与える義務はありません。
また、労使協定に定める場合は入社1年未満・休業の申し出から93日以内に雇用期間が終了する場合・1週間の所定労働日数が二日以下の労働者も対象外とすることができます。
介護休業中は雇用保険の介護休業給付金が支給されるケースがありますので、休業期間を上手に利用し、仕事と介護を両立できる体制づくりが重要になります。
介護と仕事の両立(1)
近年では家族を介護するために離職する介護離職が年10万人を超えていますが、これに対し介護と仕事の両立を図ろうとするものとして介護休業制度があります。
育児・介護休業法は毎年のように改正され、変更点を把握することが大変ですが、現時点における制度の概要を確認していきたいと思います。
介護休業はその名の通り介護休業について定める法律ですが、介護と仕事の両立を図るための短時間勤務措置や時間外労働の制限なども設けられています。
介護と仕事の両立し、介護離職を防ぐために、どのような措置があるのか把握してほしいと思います。
就業規則をポータルサイトに掲示していても労働者からコピーの交付を求められたら拒否できる?
2024年4月から、労働条件の明示に関するルールが改定されています。それに伴い、就業規則の周知に関して次のような要件が追加されたことに注意しなければなりません。
『就業規則の周知については、平成11年3月31日付基発第169号「労働基準法関係解釈例規の追加について」において、「就業規則等を労働者が必要な時に容易に確認できる状態にあることが『周知させる』ための要件である。」と示しているところであるが、具体的には、使用者は、就業規則を備え付けている場所を労働者に示すこと等により、就業規則を労働者が必要な時に容易に確認できる状態にする必要があるものであること』(令5.10.12基発1012号)
ところで、「就業規則のコピーの要求があった場合にそれに応じなければならないか」についてですが、会社にそのような義務はありません。ポータルサイトに掲載していてもコピーできないようにしている会社もあります。コピーに応じるか否かは会社の判断です。コピーに応じても外部持ち出し禁止にすることもできます。
なお、退職した労働者から、残業代の未払い請求のためや退職後の競業禁止義務の確認のために就業規則の交付や閲覧を求められることがあります。このような場合の対応についても、退職後に会社の就業規則の閲覧を認める法律上の義務はありません。すでに退職している以上は、その会社の労働者ではないので、労基法上の周知義務の対象ではないと考えられるためです。交付または閲覧に応じるかどうかは会社の判断ということになります。
就業規則の開示とその方法について
就業規則の閲覧・周知をめぐって、労働者とトラブルになることはよくあります。会社によっては就業規則はあるものの労働者の権利意識を持たせることになり会社の重要な内部文書でもあるので開示していない、というケースも少なくありません。
しかし、労働基準法上、就業規則は労働者への周知義務があり(第106条)、周知することは就業規則が効力を持つための要件です。つまり、労働者が閲覧できる状態にない就業規則はその効力が認められず、就業規則がないのと同じ扱いになります。
就業規則は、会社およびその会社で働く労働者双方にとっての職場のルールであり、相互にそれを遵守しなければなりません。そのルールが周知されていない状況においては、仮に労働者がなんらかの問題を起こしても解雇や懲戒処分できないことになります。
就業規則の周知の方法には、①常時各作業場の見やすい場所に掲示し、または備え付けること、②書面を労働者に交付すること、③磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置することと定められており、そのいずれかの方法によらなければなりません(労基則第52条の2)
具体的には、工場などで建物がいくつかに分散されている場合は、その建物ごとに休憩室などに備え付けるなど、労働者がいつでも閲覧できるようにしておくことです。書面交付で各労働者に就業規則を配布する会社もあります。
また、最近は③の方法として、社内ポータルサイトに就業規則を掲載し、労働者がいつでも見られるようにしている会社もあります。このような方法で労働者に周知しておくことで、会社として就業規則の遵守を求めることができ、違反者に対しては何らかの懲戒等の処分もできることになります。