社会保険の適用拡大について
令和4年10月からは従業員数101人以上、令和6年10月からは従業員数51人以上の企業において、一定の要件を満たす短時間労働者は社会保険に加入することとなっております。
一定の要件とは以下のすべての要件を満たすことをいいます。
①週の所定労働時間が20時間以上
②月額賃金が8.8万円以上
③2カ月を超える雇用の見込みがある
④学生ではない
社会保険への加入を希望しないため、週の所定労働時間を20時間未満にした場合でも、恒常的に残業するなどして週20時間以上働くことになれば加入する必要があります。
具体的には実際の労働時間が連続する2月において週20時間以上となった場合で、引き続き同様の状態が続いている、または続くことが見込まれる場合は実際の労働時間が週20時間以上となった月の3月目の初日に資格を取得することとなります。
例えば4月15時間、5月20時間、6月20時間で7月以降も20時間となることが見込まれる場合は7月1日が資格の取得日となります。
募集時の労働条件明示ルールの変更
職業安定法施行規則の改正を受け、令和6年4月1日より労働者の募集時に明示すべき労働条件のルールが変更されます。
新たな明示事項として、以下が追加されます。
①従事すべき業務の変更の範囲
②就業場所の変更の範囲
③有期労働契約を更新する場合の基準
①は雇入れ直後の業務内容を示すとともに、その後の業務内容の変更の範囲について明示します。
②は①と同様に雇入れ直後の就業場所を示すとともに、その後の就業場所の変更の範囲について明示します。
③は有期契約の場合の更新の有無、更新の基準、通算契約期間・更新回数の上限についての明示が必要となります。
最低賃金全国平均で1000円越えへ
7月28日、中央最低賃金審議会は令和5年度の最低賃金改定について答申をまとめました。
それによりますと、39円~41円を引き上げ目安とし全国加重平均は1,002円となります。
これは過去最高の上昇額となり(昨年は31円)、引上げ率に換算すると4.3%となります。
全国平均で1000円を超えるかが注目されていましたが、目安通りに引き上げがされれば到達することになりました。
介護サービス事業所の毎年の報告が義務化
来年度から介護保険サービスを提供する全ての事業所は、毎年財務状況や従事者数などの報告を行うことを義務付けられることになりました。
現在は3年に一回、抽出事業所のみが報告の対象となっていましたが、毎年全事業所を対象とすることでより正確な情報を集め、業務に支障をきたす場合にスムーズな支援を行うことを目的とします。
定年後の再雇用での賃金減額について
定年後の再雇用で職務内容が変わっていないにも関わらず、基本給が半額以下に減額されたことについての最高裁判所の判断が示されました。
高等裁判所は月額16万円~18万円だった基本給が再雇用後に8万円強となったことが労働契約法20条の「不合理」にあたると判断しましたが、最高裁は正社員の基本給に対して勤続給の性質だけではなく、職務給・職能給の性質も有する余地があるとし、嘱託職員の給与の性質を検討していないと指摘しています。
「正職員と嘱託職員である被上告人らとの間で基本給の金額が 異なるという労働条件の相違について、各基本給の性質やこれを支給することとさ れた目的を十分に踏まえることなく、また、労使交渉に関する事情を適切に考慮し ないまま」不合理と認めたしたとして差し戻しにしました。
新型コロナ、5類への移行と企業対応
2類から5類への移行
新型コロナウイルス感染症が、2023年5月8日から「5類感染症」に移行されました。それにより、その対応が法律に基づき行政が様々な要請・関与をしていく仕組みから、個々の選択を尊重し、国民一人ひとりの自主的な取り組みを基本とする方針に転換されています。
新型インフルエンザ等感染症(2類相当)と5類感染症の主な違い(出典:厚生労働省ホームページ)
企業としての対応
企業においては、5類移行に伴う取り扱いの変更を踏まえ、これまでの職場ルールを見直していく必要があります。その一つが「マスクの着用」です。
厚生労働省の事務連絡(2月10日発出、以下事務連絡)では、3月13日から、マスクの着用は個人の判断が基本となり、本人の意思に反してマスクの着用を強いることがないよう配慮することと示されました。ただし、「事業者が感染対策上または事業上の理由等により、利用者または従業員にマスクの着用を求めることは許容される」としています。
したがって、職場においては従業員の意思に反してマスクの着脱を強いるようなことはできませんが、マスク着用が必要とされる場面などを含め、会社として基本的な方針を定めることは差し支えありません。
検温や定期的な手指消毒、従業員のデスク間や会議室等におけるパーテーションの設置を講じてきた職場も多くあります。検温や定期的な手指消毒は継続的に実施する企業も多いでしょうが、パーテーションの撤去、社員同士や取引先との会食や飲み会の解禁などについても見直しが必要になります。
体調不良者への対応
新型コロナに感染した従業員から体調不良で休みの申し出があった場合には、従業員の選択により年次有給休暇の取得または欠勤扱いとすることに問題はありませんが、就業規則の定めに則った対応が必要になります。
また、感染が疑われる体調不良者や、感染者でも症状が軽度で出勤を希望する従業員、濃厚接触者への対応をどうするかを検討する必要もあります。
企業には安全配慮義務があることを踏まえると、体調不良者で感染が疑われる場合や濃厚接触者である場合には、本人の就業希望の有無を問わずテレワークを命ずる、または休業させるなど出社以外の対応の検討も必要になります。なお、5類への移行により就業を禁止するときは、労働基準法に基づき休業手当(平均賃金の6割以上)を支払う必要があります。
令和5年5月勤労統計調査
厚生労働省は毎月勤労統計調査の令和5年5月分の速報結果を公表しました。
現金給与総額は283,868円(2.5%増)となり、うち一般労働者が368,417円(3.0増)、パートタイム労働者が102,303円(3.6%増)となり、パートタイム労働者比率が31.84%(0.65ポイント上昇)となりました。
一般労働者の所定内給与は323,676円(2.2%増)、パートタイム労働者の時間当たり給与は1,269円(2.5%増)となりました。
就業形態計の所定外労働時間は9.7時間(前年同月と同水準)でした。
賃金は上昇しているものの実質賃金はマイナスが続いており、5月も約1%のマイナスとなっております。
最低賃金について
厚生労働省の中央最低賃金審議会は6月30日、今年の最低賃金の引上げ額の目安を決める議論を開始しました。
最低賃金については、昨年は過去最高の引上げ額となりましたが、今年は全国加重 平均 1,000 円を達成することを含めて、公労使三者構成の最低賃金審議会でしっかりと議論を行うとしています。
また、地域間格差に関しては、最低賃金の目安額を示すランク数を4つから3つに見直したところであり、今後とも、地域別最低賃金の最高額に対する最低額の比率を引き上げる等、地域間格差の是正を図るともしています。
物価上昇の中、全国平均で1000円を超えるかが注目されています。
最新の有効求人倍率について
令和5年5月の数値をみると、有効求人倍率(季節調整値)は1.31倍となり、前月を0.01ポイント下回りました。
新規求人倍率(季節調整値)は2.36倍となり、前月を0.13ポイント上回りました。
正社員有効求人倍率(季節調整値)は1.03倍となり、前月と同水準となりました。
5月の有効求人(季節調整値)は前月に比べ0.7%減となり、有効求職者(同)は0.1%増となりました。
5月の新規求人(原数値)は前年同月と比較すると3.8%増となりました。
国民年金の納付状況
厚生労働省の26日の発表によると、2022年度の国民年金保険料の納付率は前年度から2.2ポイント増の76.1%となり、11年連続で上昇しました。各年度の納付期限を過ぎた後、過去2年分までさかのぼって支払うことができる分を含めた最終納付率は80.7%と、初めて80%を超えました。
数年前までは60%台であったことを考えると、納付率はかなり改善されていることがうかがえます。
また、全額免除・猶予者は 606 万人と令和3年度より6万人減少しており、安易な免除者の増加によるものでもないことが分かります。