自然災害発生時に自宅待機を命じる場合の留意点(2)

 次に、自然災害時の会社の休業の際に、従業員に対して年次有給休暇の取得を命ずることができるのかについてですが、例えば、台風の直撃を受ける日を休業にしても業務上の支障がない場合、従業員に年次有給休暇取得を奨励することはできます。しかし、年次有給休暇を取得するか否かはあくまで従業員の判断であり、会社がそれを強制することはできません。なお、会社の休業に伴い労働基準法上の休業手当ではなく、賃金の全額を得るために従業員自らの判断で年次有給休暇を取得することは可能であり、会社はそれを拒むことはできません。したがって、会社として年次有給休暇の取得を前提に自宅待機を命ずることはできず、単に年次有給休暇の取得を奨励する程度にとどめておくことになります。

 ところで、自然災害等による公共交通機関の運休等により出勤できない従業員への対応ですが、会社が営業しているのであれば、欠勤として取り扱うかまたは年次有給休暇の取得とするかは従業員の選択によります。このとき、時間を要しても迂回するなどして何とか出勤できる状況で、なおかつ出勤が可能であるにもかかわらず会社が休むことを命じた場合には、休業手当の支払い義務が生じることになります。したがってこのような場合に休むかどうかの判断は従業員の判断に任せて、年次有給休暇の取得を促すべきでしょう。

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