採用した従業員から身元保証書の拒否があった場合、採用取り消しは可能か?
従業員の採用に伴い、身元保証書の提出を求める会社があります。身元保証書は、採用された者の学歴、職歴等を含めた人物保証をするためのものです。また、横領や機密漏えい、不法行為などにより故意に企業に損害を与えて損害賠償請求が発生した場合で、本人の支払い能力を超える場合に保証人への請求を可能にすることも目的としています。最近は、従業員が突然、出社せず音信不通になったり、行方不明になったりする事案も有りますので、緊急連絡先として身元保証人を連絡先としておくことも必要です。
身元保証人の人数は1名とするのが一般的ですが、会社によっては2名求める場合もあります。たとえば、1名は「親族」、もう1名は親族以外で「独立した生計を立てている人」などです。しかし、人によっては、身元保証人となる親族などがいない場合もあります。このような場合には、民間会社やNPO法人などの有料の身元保証人サービスを使い身元保証人を立てることもできます。
では、身元保証書の提出を強制することができるかというと、労働基準法では身元保証についての定めはないので、法的根拠をもって強制することはできません。他方、会社にも「採用の自由」がありますので、身元保証書の提出を強制できなくても、提出しない者を採用しないことはできます。
ただし、採用を内定した者や試用期間中の者に対して、身元保証書の提出しないことを理由として採用を取り消す場合は解雇扱いとなりますので、正当な理由なく内定取消または解雇することはできません。したがって、その根拠として就業規則等に身元保証書の提出義務が定められていることが前提となります。
具体的な注意点や、実際の事例などを次回確認したいと思います。