会社に労災保険支給の取消訴訟を起こす資格なし(2)
会社が労災保険給付の決定の取消処分を求めて訴訟を起こした本件に対し、最高裁判所は訴訟を起こす資格(原告適格)がないとする判断を示しました。
判断軸として、処分の取り消しを求める場合の「法律上の利益を有する者」とは、「労災支給処分に基づく労災保険給付の額が当然に事業主の納付すべき労働保険料の額の決定に影響を及ぼすこととなるか否かが問題となる」ことを示します。その上で労災保険法は、労災保険給付の支給または不支給の判断をその請求した被災労働者等に対する行政処分をもって行うが、「これは労災保険給付に係る多数の法律関係を早期に確定するとともに、被災労働者等の権利利益の実効的な救済を図る趣旨に出たものであって、事業主の納付すべき労働保険料の額を決定する際の基礎となる法律関係まで早期に確定しようとするものとは解されない」と述べています。
また、労災保険料率については、事業ごとの労災保険給付の額に応じ、メリット収支率を介して増減し得るものとしているが「事業主間の公平を図るとともに、事業主による災害防止の努力を促進する趣旨のものであるところ、客観的に支給要件を満たさない労災保険給付の額を事業主の納付すべき労働保険料の額を決定する際の基礎とすることは趣旨に反する」と言っています。
以上を踏まえた最高裁判所の結論を次回に確認します。