お知らせ

整理解雇について(1)

 会社が不況や経営不振などで労働者を解雇せざるを得ないことがあります。これを整理解雇と言いますが、以下の4要件に従って有効か厳しく判断されます。

 

  • 人員削減の必要性…企業経営上の十分な必要性に基づいているか
  • 解雇回避の努力…配置転換・希望退職者の募集など解雇回避のために努力しているか
  • 人選の合理性…対象者の決定基準が客観的・合理的・公正であるか
  • 解雇手続きの妥当性…解雇の必要性とその時期・規模・方法について十分に説明を行っているか

 

 実際の裁判例を見ながら、これらの要件がどのように判断されるかを次回から確認したいと思います。

 

パート・アルバイトに休日出勤を命じることができるか

 パート・有期雇用労働者を雇い入れた際の労働条件の明示事項は、労基法15条に基づくものとパート・有期雇用労働法6条に基づくものの2つがあります。

「所定労働日以外の労働の有無」は、パート法により明示するよう努めるべき事項となっていますし、厚生労働省の指針ではできるだけ所定労働日以外の日に労働させないよう努めることとしています。

 正社員就業規則を踏襲したパートタイム就業規則に休日出勤の根拠規定が存在するという場合、明示した労働条件との関係について、労働契約法では「就業規則で定める基準に達しない労働契約は無効、就業規則で定める基準による」と規定しています。

 しかし、これはあくまで就業規則が労働契約を上回る場合の処理基準です。就業規則でどのような定め方をしていても、これより有利な個別の労働契約があればその方が優先します。

 労働契約で所定労働日以外の出勤について記載がないなら、休日出勤を命じるためには、本人の同意が必要になります。

1日1時間分のみなし残業とした場合、欠勤分相当の固定残業代を控除は可能か

 仮に欠勤した際に際に固定残業代を含めて控除するとして、月平均所定労働日数20日で20時間分の固定残業代とした場合、1日欠勤に対して1時間分を控除することなります。

 欠勤に関しては、ノーワーク・ノーペイの原則で就業規則や賃金規程の欠勤控除規程に基づき欠勤日数分の賃金を控除することは問題ありません。固定残業代についても、就業規則や賃金規程に固定残業代も欠勤控除の対象とすることおよびその計算方法が定められている場合には控除することができます。

 1日欠勤したときは1時間を控除し、その結果、その月の時間外労働関数が19時間以内であれば19時間分を固定残業代として支払い、19時間を超える残業がある場合は別途支払うことになります。しかし、固定残業代を欠勤控除の対象にしなければ、時間外労働が月20時間までは別途支払う必要はありません。

 欠勤控除がある都度、固定残業代を含めて残業代を再計算し直す煩雑さを考えると、欠勤控除の対象に固定残業代を含めるか否かは、その会社の時間外労働の実態によることになるでしょう。

 ただし、就業規則に「傷病等により30日以上欠勤した場合には、休職とする」など、休職条件として長期欠勤を定めている場合があります。ノーワーク・ノーペイの原則があるとはいえ、欠勤控除の対象として、固定残業代を含めていないことによって固定残業代の支払いを求められることも想定されます。

 しかし、欠勤事由を問わず、長期にわたって全く就労していない場合において、基本給や他の手当は控除されて支払われない一方で、固定残業代だけ支払われるのは適切ではありません。したがって、例えば、「月の所定労働日数の2分の1以上欠勤する場合」といったように何日以上の欠勤で固定残業代も控除となるか明確にしておく必要があるでしょう。

固定残業における欠勤控除について

 固定残業代は、毎月、一定の時間外労働数の割増賃金を定額で支払うものであり、定額残業代、みなし残業とも言われています。この固定残業代を採用するには、①基本給等固定的な賃金と固定残業代が区分して支払われていること、②固定残業代として時間外労働の何時間分に相当するものなのかということ、③固定残業代を超える時間外労働、休日労働および深夜労働に対して割増賃金を追加で支払うことの3つについて、労働契約書や就業規則上、明確になっていればなりません。

 したがって、例えば「基本給30万円(固定残業代を含む)」などとするだけでは固定残業代の要件を満たしていないことになります。また、固定残業代を採用している場合には、残業の有無にかかわらず、固定残業代は満額支払わなければなりません。例えば、月20時間分の残業代を固定残業代としている場合、労働時間が実際には10時間しか残業をしていなくても、20時間分の残業代を支払う必要があります。しかし、仮に労働者が25時間の残業をした場合は、固定残業代を超える5時間分の残業代を別に支払わなければなりません。

 また、固定残業代を導入していることを理由に労働者の労働時間管理が適正に行われていないことがありますが、欠勤、遅刻、早退を含めて労働時間を正確に把握し、固定残業時間数を超える残業の有無を確認する必要があります。

 では、1日1時間分のみなし残業とした場合、欠勤分相当の固定残業代を控除は可能でしょうか。

 次回、この点について説明していきたいと思います。

 

職種限定契約の配転は労働者の同意が必要

 職種限定に関する合意があった場合における配置転換命令の違法性が争点となった裁判で、最高裁は違法と認定しなかった二審判決を破棄し、審理を大阪高裁に差し戻しました。

 一審と二審は黙示の職種限定合意を認めつつ、配転命令は違法無効とはいえないと判断しました。

 しかし、最高裁は配転の違法性を認めなかった二審判決を破棄し、職種限定の合意があるなかでは、労働者の同意を得ずに職種変更を伴う配転を命じる権限を使用者はそもそも有していないと指摘しています。

有期雇用契約の上限年齢を定めることができるか(2)

 厚生労働省のモデル労働条件通知書では、通算契約期間または更新回数についてのみ規定しており、年齢については書かれておりませんが、労働局によれば年齢による方法も違法とまではいえないとしております。

 ただし、就業規則の規定は確認する必要があります。

 したがって個別の契約のみで上限年齢を定めるのではなく、就業規則でたとえば、更新上限を設けることがあるという根拠とともに委任条項を規定したり、上限等について特別の定めをした場合は、その定めを優先するなどといった規定を付け加えることが考えられます。

 あるいは上限年齢を明示したい場合も留意が必要です。60歳の誕生日までとして、さらに具体的にいつまでの期間なのか、具体的な期間を記載しておくことがよいでしょう。

有期雇用契約の上限年齢を定めることができるか

 2024年4月から労働条件の明示ルールが変更され、新たに「就業場所・業務の変更の範囲」などが明示事項に追加されました。

 また、有期労働契約の従業員に対しては更新上限がある場合の通算契約期間の上限・更新回数の上限を明示する必要と、労働契約締結後に更新上限を新設・短縮する場合の説明が必要になります。

 有期契約を長期間反復更新している場合でも、運用として一定の年齢を上限にしていることもあり得ます。もっとも年齢を書くとその年齢まで契約更新が必要になるのではという懸念も生まれます

 あくまで契約期間の上限であり、上限よりも前に契約が終了する可能性があることは、更新基準を明示するうえであらかじめ説明するべきと言えます。

 正社員の定年のようなイメージで一定の年齢を上限と定める場合の注意点について、次回解説します。

会社情報の漏洩行為は懲戒解雇に当たるか?

 転職する人が増えていますが、競合他社への転職をする人も少なくありません。その際に注意したいのが会社に損害を与えかねない営業秘密など会社情報の持ち出しです。

 不動産会社の経理部長代理の職にあった元従業員が、会社の事業全般に関する情報を持ち出したことに対し、東京地方裁判所は「転職先で利用し、自らまたは転職先の利益を図ろうしたとものであり、不正に利益を得ることを禁止する就業規則条項に違反し、懲戒事由に該当する」としています。

 持出行為によって現に競合他社に情報が漏洩した事実までは認められず、元従業員が一定の範囲で会社の調査に協力していること等の有利な事情を踏まえても、会社の懲戒解雇には相当性があるとして、退職金の請求を棄却しました。

学生時代の国民年金は納めた方が良い?(2)

 現在(令和6年)に令和4年度の国民年金保険料を納める場合、1か月あたり16590円を納めることになり1年では199080円となります。これだけ納めることで将来の1年間で受給できる金額が19200円ほど増えます。

 また、追納した国民年金保険料は所得税の計算の際にも引かれますので、年収300万円の場合1万円ほど所得税が少なくなります。

 これからの自らのライフプランを考えるのに遅いことはありませんので、よく検討して追納制度の利用も考慮してください。

 ただし、追納制度は保険料を納めていない古い期間から納めるものになります。

「3年度以上前の加算がされているものではなくて、加算がされていない去年の分を納める」や「保険料の低い年だけ納めたい」ということはできませんのでご注意ください。

学生時代の国民年金は納めた方が良い?

 4月から大学などを卒業されて、新社会人になった方が多くいると思います。

 国内に住所を有する20歳以上の方は国民年金への加入義務がありますが、学生時代は学生納付特例という保険料の納付を猶予する制度があり、国民年金の保険料を納めていなかった方も多いかと思います。

 この納付が猶予されていた期間の国民年金の保険料を後から納めることができるのが追納制度で、追納制度を利用することで将来の国民年金の受け取れる金額を増やすことができます。

 追納制度は10年前の免除期間までの保険料を納めることができますが、3年度以降に納めると加算額が発生します。例えば、現在(令和6年)ですと令和4年度の保険料には加算額がありませんが、令和3年度より前の保険料には加算額が上乗せされています。

 加算額は大きくありませんが、この点を考慮すると追納制度を利用する場合は早めに利用するのがお得と言えます。

 追納した場合の国民年金の増額と、社会保険料控除について次回見ていきたいと思います。

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