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介護と仕事の両立(3)
介護休業と違い、通院への付き添いなど短時間の休みが必要な場合は介護休暇を取得することができます。
対象となる家族は介護休業の場合と同じで、労使協定を締結している場合は入社6か月未満の労働者や1週間の所定労働日数が2日以下の労働者を対象外とすることができますが、原則として対象となる労働者は日々雇い入れられる者以外となっています。
有給休暇とは別に休暇を取ることができますが、有給か無給かは会社の規定によります。また、雇用保険からの介護休業給付のような制度もありません。
休暇を取得することのできる日数は対象家族が一人の場合は年5日、二人以上の場合は年10日までとなっています。
介護と仕事の両立(2)
介護休業は休業期間中に仕事と介護を両立させる体制を整えることを目的として、対象家族一人につき通算93日まで取得することができます。
対象となる家族は配偶者、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫となっています。
介護休業を取得できる労働者は原則として日々雇い入れられる者を除いたすべての労働者となりますが、介護休業の取得予定日から93日を経過する日から6か月以内に契約が満了し、更新されないことが明らかな労働者は含まれません。
例えば、5月1日から介護休業を取得予定の場合、93日後(=8月2日)から6か月以内に更新回数の上限に達し、更新されない労働者に対しては介護休業を与える義務はありません。
また、労使協定に定める場合は入社1年未満・休業の申し出から93日以内に雇用期間が終了する場合・1週間の所定労働日数が二日以下の労働者も対象外とすることができます。
介護休業中は雇用保険の介護休業給付金が支給されるケースがありますので、休業期間を上手に利用し、仕事と介護を両立できる体制づくりが重要になります。
介護と仕事の両立(1)
近年では家族を介護するために離職する介護離職が年10万人を超えていますが、これに対し介護と仕事の両立を図ろうとするものとして介護休業制度があります。
育児・介護休業法は毎年のように改正され、変更点を把握することが大変ですが、現時点における制度の概要を確認していきたいと思います。
介護休業はその名の通り介護休業について定める法律ですが、介護と仕事の両立を図るための短時間勤務措置や時間外労働の制限なども設けられています。
介護と仕事の両立し、介護離職を防ぐために、どのような措置があるのか把握してほしいと思います。
就業規則をポータルサイトに掲示していても労働者からコピーの交付を求められたら拒否できる?
2024年4月から、労働条件の明示に関するルールが改定されています。それに伴い、就業規則の周知に関して次のような要件が追加されたことに注意しなければなりません。
『就業規則の周知については、平成11年3月31日付基発第169号「労働基準法関係解釈例規の追加について」において、「就業規則等を労働者が必要な時に容易に確認できる状態にあることが『周知させる』ための要件である。」と示しているところであるが、具体的には、使用者は、就業規則を備え付けている場所を労働者に示すこと等により、就業規則を労働者が必要な時に容易に確認できる状態にする必要があるものであること』(令5.10.12基発1012号)
ところで、「就業規則のコピーの要求があった場合にそれに応じなければならないか」についてですが、会社にそのような義務はありません。ポータルサイトに掲載していてもコピーできないようにしている会社もあります。コピーに応じるか否かは会社の判断です。コピーに応じても外部持ち出し禁止にすることもできます。
なお、退職した労働者から、残業代の未払い請求のためや退職後の競業禁止義務の確認のために就業規則の交付や閲覧を求められることがあります。このような場合の対応についても、退職後に会社の就業規則の閲覧を認める法律上の義務はありません。すでに退職している以上は、その会社の労働者ではないので、労基法上の周知義務の対象ではないと考えられるためです。交付または閲覧に応じるかどうかは会社の判断ということになります。
就業規則の開示とその方法について
就業規則の閲覧・周知をめぐって、労働者とトラブルになることはよくあります。会社によっては就業規則はあるものの労働者の権利意識を持たせることになり会社の重要な内部文書でもあるので開示していない、というケースも少なくありません。
しかし、労働基準法上、就業規則は労働者への周知義務があり(第106条)、周知することは就業規則が効力を持つための要件です。つまり、労働者が閲覧できる状態にない就業規則はその効力が認められず、就業規則がないのと同じ扱いになります。
就業規則は、会社およびその会社で働く労働者双方にとっての職場のルールであり、相互にそれを遵守しなければなりません。そのルールが周知されていない状況においては、仮に労働者がなんらかの問題を起こしても解雇や懲戒処分できないことになります。
就業規則の周知の方法には、①常時各作業場の見やすい場所に掲示し、または備え付けること、②書面を労働者に交付すること、③磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置することと定められており、そのいずれかの方法によらなければなりません(労基則第52条の2)
具体的には、工場などで建物がいくつかに分散されている場合は、その建物ごとに休憩室などに備え付けるなど、労働者がいつでも閲覧できるようにしておくことです。書面交付で各労働者に就業規則を配布する会社もあります。
また、最近は③の方法として、社内ポータルサイトに就業規則を掲載し、労働者がいつでも見られるようにしている会社もあります。このような方法で労働者に周知しておくことで、会社として就業規則の遵守を求めることができ、違反者に対しては何らかの懲戒等の処分もできることになります。
同一労働同一賃金の考え方(3)
日本郵便(大阪)事件では無期労働契約を締結している正社員に扶養手当が支給されるのに対して、有期労働契約の契約社員には支給されないことを不合理と判断しました。
継続的な勤務が見込まれる労働者に扶養手当を与えるということは使用者の経営判断として尊重し得るが、契約社員についても扶養親族があり、この裁判の原告らのうち7人は契約社員として10年以上勤務していたことなどを考慮し扶養手当の対象とすべきとしています。
このケースでは扶養手当の趣旨が「継続的な雇用を確保する」ことを目的としているため、契約社員であっても更新を繰り返し、継続的な勤務が見込まれるとして扶養手当を支給しないのは不合理な扱いであると判断されました。
前回のケースと合わせ、単なる手当の名称などではなく、その趣旨・性質によって不合理であるかの判断がされていることが分かります。
同一労働同一賃金の考え方(2)
前回触れた長澤運輸事件では住宅手当・家族手当・役付手当・賞与については支給しないことは不合理ではないと判断されました。
これらのうち、住宅手当・家族手当・賞与については、再雇用された嘱託乗務員が老齢厚生年金の支給を受けることが予定され、老齢厚生年金が支払われるまでも調整給が支払われることを理由としています。
役付手当については年功給、勤続給的性格のものではないことを理由としています。
一方、家族手当に近い性質を持つ扶養手当を支給しないことに対し、不合理であるとの判断が下された例もあります。
次回はその違いについて見ていきます。
同一労働同一賃金の考え方(1)
2020年4月1日(中小企業におけるパートタイム・有期雇用労働法は2021年4月1日)から正社員と非正規雇用労働者との間の不合理な待遇の差を設けることが禁止されました。
裁判例を基に、どのようなものが不合理にあたるのかを確認していきたいと思います。
平成30年の長澤運輸事件では、二つの手当について正社員との間に差を設けることは不合理と判断されました。
不合理とされたのは精勤手当とその精勤手当が計算の基礎に入っていなかった時間外手当になります。
精勤手当については職務内容が同一である以上、皆勤を奨励する必要性に違いはないと判断されました。
一方で不合理と判断されなかったものとして住宅手当・家族手当などがあり、これについては次回以降に触れていきたいと思います。
フリーランスの労災保険の特別加入を承認
フリーランスとして仕事をする方の労災保険への特別加入が今年の秋から拡大されることになりました。
想定されるのは営業・講師・インストラクター、デザイン制作・コンテンツ制作、調査・研究・コンサルティング、データ入力、ライティング・記事等執筆業務などで、約273万人いるとされています。
通常の労災保険は使用者が保険料を負担しますが、特別加入の場合は加入者自身が保険料を負担することになります。保険料全額自己負担でも労災に加入したいと考える人が約半数いるとの調査もあります。
この措置は今年の秋からと予定されていますので、加入を希望するフリーランスの方は今後発表される具体的な手続きについて確認するようにしてください。
育児休業後の人事異動について(2)
経済的な不利益を伴わない配置の変更であっても、産前産後休業および育児休業から復職した労働者に対する「不利益な取り扱い」に該当するケースがあることを紹介しました。
これは会社側が一方的に配置変更を行ったケースであり、当該労働者の自由な意思に基づいて人事措置を承諾したと認められる場合、または業務上の必要性の内容や程度、影響などに照らして、均等法や育児介護休業法の趣旨・目的には実質的に反しない場合は問題はないとしています。
労働者の意思を確認し、適切な人事措置を取るように心がけることが重要です。