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整理解雇について(7)

 所属部門の閉鎖に伴う解雇について争われた事件の第3次の裁判所の判断は解雇権の濫用にはあたらないとしたものでした。

 「雇用契約の終了は労働者にとって当面の生活の維持に重大な支障を来すものであるから、生活維持・再就職の便宜について相応の配慮を行うとともに、雇用契約を解消せざるを得ない事情について労働者の納得を得るための説明など、誠意を持った対応」が求められるとされています。

 本件では他社の経理部に市場価格としては最高限度の年収でポジションを提案し、さらに退職後1年間については補助として200万円を加算すると提案しました。

 労働者・組合とも三か月にわたって全7回交渉を行い、雇用契約を解消せざるを得ない事情を説明していました。

 これらの対応が誠意ある対応と認められ、解雇が有効であるとされました。

整理解雇について(6)

 前回までで見た銀行の所属部門が閉鎖されることに伴って解雇の対象となった事件では、地位保全の仮処分の申し立てが行われ、整理解雇の4要件について異なった裁判所の判断が下されています。

第2次の判断では、閉鎖される部門に所属していたことで対象とされたのは合理性があり、労働者や労働組合と十分な話し合いが行われたと評価していますが、「解雇によって達成しようとする経営上の目的とこれを達成するための手段である解雇ないしその結果としての失職との間には均衡が失われている」ことから、解雇の権利の濫用として無効としています。

 第3次の判断では、また異なった見解がしめされていますので、次回以降に確認したいと思います。

整理解雇について(5)

 前回見た銀行での整理解雇が無効と判断された例では、回避努力がなされていなかった点も指摘されています。

 銀行側は組合との団体交渉の実施に消極的であり、労働者・組合が職務や賃金条件の変更の上での勤務継続の希望を表明したにも関わらず、当所の応諾期間を堅持し、その後の交渉を一切拒絶しました。

 これらの点から解雇回避努力を尽くしたとは認められず、労働者や労働組合との誠意ある協議を行ったとも認められませんでした。

 以上の点を踏まえて、人員削減の必要性を直ちに否定できないものの、それ以外に要件を充たしておらず、この解雇は権利濫用による無効とされました。

 可能な限り雇用の継続を図ろうとした学校法人の例と、交渉の拒絶した銀行での例の対照的な点が分かるかと思います。

整理解雇について(4)

 前回までは整理解雇の4要件を満たし、有効である例を見てきましたが、今回は整理解雇が無効であると判断された例を見ていきたいと思います。

 銀行の所属部門が廃止された結果、担当業務が消滅し余剰人員となったとして解雇されたことを争った事例では、解雇が無効であると判断されています。

 この判例では4要件についてそれぞれどのように判断され、解雇が無効と判断されたかを確認していきたいと思います。

 まず、整理解雇の必要性についてですが、部門の閉鎖が経営方針の転換から行われ、経営悪化に伴う人員削減が不可避ではなかったとしています。

 次に整理解雇の基準については「閉鎖される部署に属していたことで解雇の対象となっているが、対象者の選定の基準も設定されず、偶然性に左右され公平さを欠く」としています。

 法科大学院そのものが廃止となり整理解雇の対象の基準を示していた先の事例との違いがよくわかると思います、

整理解雇について(3)

 前回の例に挙げた学校法人では、解雇された教員の意向に沿って雇用維持の方策を模索し、法学部における担当科目の確保を2度にわたって試みています。

 また、それが実現できなかったことを踏まえ、解雇された教員と繰り返し協議を行い、教員組合や人事公正委員会での審議も経たうえで解雇を行っています。

 裁判所はこうしたことや実務家教員以外の職種への配置転換を想定されていなかったことを踏まえ、「十分な解雇回避努力、解雇に伴う不利益軽減措置をしており、本件解雇に至るまでの手続きも相当であった」と解雇の有効性を認めました。

整理解雇について(2)

 学校法人と無期労働契約を締結していた大学院の教員が法科大学院の廃止により解雇されたことについて、整理解雇が有効であると判断された例を見てみましょう。

 この学校法人では解雇の約4年5か月前に法科大学院の学生募集を停止する旨の発表を行い、解雇の8か月前に法科大学院を廃止しています。

 この教員は法科大学院では弁護士としての経験を活かし、法律実務教育に従事することを期待されて雇用された実務家教員であり、弁護士業務との兼任も認められていました。

 裁判所は「実務家教員以外の職種に配置転換は想定されていなかった」として、「法科大学院の廃止に伴い実務家教員の雇用を終了することとした判断は合理性を有し、実務家教員の人員削減の必要性及びその対象として原告を選定したことの妥当性は認められる」としました。

 

整理解雇について(1)

 会社が不況や経営不振などで労働者を解雇せざるを得ないことがあります。これを整理解雇と言いますが、以下の4要件に従って有効か厳しく判断されます。

 

  • 人員削減の必要性…企業経営上の十分な必要性に基づいているか
  • 解雇回避の努力…配置転換・希望退職者の募集など解雇回避のために努力しているか
  • 人選の合理性…対象者の決定基準が客観的・合理的・公正であるか
  • 解雇手続きの妥当性…解雇の必要性とその時期・規模・方法について十分に説明を行っているか

 

 実際の裁判例を見ながら、これらの要件がどのように判断されるかを次回から確認したいと思います。

 

パート・アルバイトに休日出勤を命じることができるか

 パート・有期雇用労働者を雇い入れた際の労働条件の明示事項は、労基法15条に基づくものとパート・有期雇用労働法6条に基づくものの2つがあります。

「所定労働日以外の労働の有無」は、パート法により明示するよう努めるべき事項となっていますし、厚生労働省の指針ではできるだけ所定労働日以外の日に労働させないよう努めることとしています。

 正社員就業規則を踏襲したパートタイム就業規則に休日出勤の根拠規定が存在するという場合、明示した労働条件との関係について、労働契約法では「就業規則で定める基準に達しない労働契約は無効、就業規則で定める基準による」と規定しています。

 しかし、これはあくまで就業規則が労働契約を上回る場合の処理基準です。就業規則でどのような定め方をしていても、これより有利な個別の労働契約があればその方が優先します。

 労働契約で所定労働日以外の出勤について記載がないなら、休日出勤を命じるためには、本人の同意が必要になります。

1日1時間分のみなし残業とした場合、欠勤分相当の固定残業代を控除は可能か

 仮に欠勤した際に際に固定残業代を含めて控除するとして、月平均所定労働日数20日で20時間分の固定残業代とした場合、1日欠勤に対して1時間分を控除することなります。

 欠勤に関しては、ノーワーク・ノーペイの原則で就業規則や賃金規程の欠勤控除規程に基づき欠勤日数分の賃金を控除することは問題ありません。固定残業代についても、就業規則や賃金規程に固定残業代も欠勤控除の対象とすることおよびその計算方法が定められている場合には控除することができます。

 1日欠勤したときは1時間を控除し、その結果、その月の時間外労働関数が19時間以内であれば19時間分を固定残業代として支払い、19時間を超える残業がある場合は別途支払うことになります。しかし、固定残業代を欠勤控除の対象にしなければ、時間外労働が月20時間までは別途支払う必要はありません。

 欠勤控除がある都度、固定残業代を含めて残業代を再計算し直す煩雑さを考えると、欠勤控除の対象に固定残業代を含めるか否かは、その会社の時間外労働の実態によることになるでしょう。

 ただし、就業規則に「傷病等により30日以上欠勤した場合には、休職とする」など、休職条件として長期欠勤を定めている場合があります。ノーワーク・ノーペイの原則があるとはいえ、欠勤控除の対象として、固定残業代を含めていないことによって固定残業代の支払いを求められることも想定されます。

 しかし、欠勤事由を問わず、長期にわたって全く就労していない場合において、基本給や他の手当は控除されて支払われない一方で、固定残業代だけ支払われるのは適切ではありません。したがって、例えば、「月の所定労働日数の2分の1以上欠勤する場合」といったように何日以上の欠勤で固定残業代も控除となるか明確にしておく必要があるでしょう。

固定残業における欠勤控除について

 固定残業代は、毎月、一定の時間外労働数の割増賃金を定額で支払うものであり、定額残業代、みなし残業とも言われています。この固定残業代を採用するには、①基本給等固定的な賃金と固定残業代が区分して支払われていること、②固定残業代として時間外労働の何時間分に相当するものなのかということ、③固定残業代を超える時間外労働、休日労働および深夜労働に対して割増賃金を追加で支払うことの3つについて、労働契約書や就業規則上、明確になっていればなりません。

 したがって、例えば「基本給30万円(固定残業代を含む)」などとするだけでは固定残業代の要件を満たしていないことになります。また、固定残業代を採用している場合には、残業の有無にかかわらず、固定残業代は満額支払わなければなりません。例えば、月20時間分の残業代を固定残業代としている場合、労働時間が実際には10時間しか残業をしていなくても、20時間分の残業代を支払う必要があります。しかし、仮に労働者が25時間の残業をした場合は、固定残業代を超える5時間分の残業代を別に支払わなければなりません。

 また、固定残業代を導入していることを理由に労働者の労働時間管理が適正に行われていないことがありますが、欠勤、遅刻、早退を含めて労働時間を正確に把握し、固定残業時間数を超える残業の有無を確認する必要があります。

 では、1日1時間分のみなし残業とした場合、欠勤分相当の固定残業代を控除は可能でしょうか。

 次回、この点について説明していきたいと思います。

 

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