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労働争議について
昨日、西武池袋本店でストライキが行われ注目を集めましたが、労働争議そのものは減少傾向にあります。
令和4年の労働争議は270件、総参加人員は53519人となっています。前年に比べ件数は9.1%、総参加人員は11.4%の減少で過去2番目に低くなっています。
労働争議の数が最大だったのは昭和49年(1974年)の10462件ですが、10年後の昭和59年(1984年)には4480件、さらに10年後の平成6年(1994)は1136件と急激に減少しているのが分かります。
昨年の主な要求事項は賃金が139件(全体の51.5%)で最も多く、組合保障及び労働協約に関する事項が103件(38.1%)、経営・雇用・人事に関する事項の98件(36.3%)となっており、全体の約75%が解決又は解決扱いになっています。
休日出勤した社員から振替休日を半日ずつ2日に分割して取得したいと申し出があった場合の対応は?
仕事が忙しいときに、社員に休日出勤を命ずる場合があります。労働基準法上、使用者は労働者に対して、少なくとも週に1回(または4週を通じて4日以上)の休日を与えなければなりません(第35条)。これを法定休日といいます。また完全週休2日制を採用している場合は、法定休日を上回る法定外休日を与えていることになります。
繁忙期などに、いずれの休日であっても社員に休日出勤を命じた場合の代替措置として、所定の労働日を休日に振り替えることがあります。これを「振替休日」といいます。
休日出勤に対する振替休日を、何らかの定めもなく一方的に命ずることはできません。振替休日を行うためには、就業規則または労働協約(以下、就業規則等)において、休日と労働日を事前通知により振替ができる旨が定められているか、または、労使間で休日の事前振替をする旨の個別同意がなければなりません。
したがって、会社は休日出勤をした社員に対して、振替休日を行う場合には、休日出勤前にあらかじめ振り替えて休日となる労働日を指定する必要があります。休日出勤をさせた後に休日を指定することは、振替休日とはならず、代休(休日出勤をさせた代わりに後に任意の日に休日を与える措置)となってしまいます。なお、振替休日による場合でも、前述の法定休日は確保されなければなりません。
ところで、休日とは、労働契約において労働義務がないとされている日をいい、原則として暦日(午前0時から午後12時までの24時間)を単位としています(昭23.4.5基発535号)。
したがって、振替休日も暦日を単位として与えなければならず、半日に分割することは休日を与えたとは見なされません。半日でも労働するということは、その日は労働日となり、休日を与えたことにならないのです。
なお、前述のとおり、休日には法定休日と法定外休日があります。法定休日出勤を振替休日とする場合には暦日24時間で与えなければなりませんが、法定外休日については半日単位での取得が可能です。したがって、振替休日の運用にあたっては法定休日が確保されている限り、法定外休日の振替休日については、半日単位で取得することも可能である旨を就業規則等で定めておくなどの対応が必要でしょう。
休日出勤については、それが法定休日出勤であれば、割増賃金として休日出勤の労働時間に応じて1時間当たり3割5分以上の割増賃金を支払わなければなりません。しかし、振替休日による場合には、休日と労働日を振り替えたことになるので割増賃金の支払いが不要となります。
しかし、振替休日が休日出勤と同一の週内で行われることなく、週をまたいで振り替えるなどにより、結果として休日出勤をした週の労働時間が法定労働(週40時間)を超えた場合には、その超過分につき1時間当たり2割5分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければなりません。
法定外休日に出勤した場合についても、週1日の休日は確保されているとはいえ、法定外休日に休日出勤をさせた結果、週40時間を超えて労働させることとなった場合には、その超えた労働時間については割増賃金を支払わなければなりません。なお、法定外休日については、割増賃金を支払うことで振替休日を与えないとすることができます。
すべての都道府県で最低賃金の答申
- 答申のポイントは以下になります。
- 47都道府県で、39円~47円の引上げ(引上げ額が47円は2県、46円は2県、45円は4県、44円は5県、43円は2県、42円は4県、41円は10都府県、40円は17道府県、39円は1県)
- 改定額の全国加重平均額は1,004円(昨年度961円) ※昨年度との差額43円には、全国加重平均額の算定に用いる労働者数の更新による影響分(1円)が含まれている
- 全国加重平均額43円の引上げは、昭和53年度に目安制度が始まって以降で最高額
- 最高額(1,113円)に対する最低額(893円)の比率は、80.2%(昨年度は79.6%。なお、この比率は9年連続の改善)
答申された改定額は、都道府県労働局での関係労使からの異議申出に関する手続を経た上で、都道府県労働局長の決定により、10月1日から10月中旬までの間に順次発効される予定です。
男女格差にオールジャパンで対応を
日本の男女格差指数が最低順位を更新したことに触れましたが、政府は「女性版骨太の方針2023」で女性活躍を推進する観点から、東証プライム市場の上場企業を対象に2025年までに女性役員を一人以上、2030年までに女性役員比率を3割以上とする目標を掲げています。
また、女性活躍推進法の改正によって従業員300人超の企業における男女賃金差の開示が本格的に始まるなど、新たな施策も打ち出されていますがその実行力は未知数です。
勤続年数に強くリンクした報酬システムや固定的な性別役割分担意識など、長い間に染み付いた意識を変えていくことは容易ではありません。企業規模に関係なく、オールジャパンで男性中心でない多様な価値観や考え方によって企業を成長させていくことが強く求められているといえるでしょう。
男女格差指数で後退
今年も世界経済フォーラムから世界の男女平等度のランキングであるジェンダーギャップ指数が公表されました。
日本の順位は146ヶ国中125位で最低順位を更新し、主要7ヶ国(G7)では最下位です。
同指数は政治・経済・教育・健康の4分野14項目の男女格差を総合して数値化しています。完全な平等が「1」とされ、日本の指数は0.647で世界平均の0.684を下回っています。
同一労働における賃金格差が0.621、推定勤労所得が0.577、管理職的職業従事者の男女比が0.148となっており、政治や経済分野が全体の足を引っ張っています。
社会保険の適用拡大について
令和4年10月からは従業員数101人以上、令和6年10月からは従業員数51人以上の企業において、一定の要件を満たす短時間労働者は社会保険に加入することとなっております。
一定の要件とは以下のすべての要件を満たすことをいいます。
①週の所定労働時間が20時間以上
②月額賃金が8.8万円以上
③2カ月を超える雇用の見込みがある
④学生ではない
社会保険への加入を希望しないため、週の所定労働時間を20時間未満にした場合でも、恒常的に残業するなどして週20時間以上働くことになれば加入する必要があります。
具体的には実際の労働時間が連続する2月において週20時間以上となった場合で、引き続き同様の状態が続いている、または続くことが見込まれる場合は実際の労働時間が週20時間以上となった月の3月目の初日に資格を取得することとなります。
例えば4月15時間、5月20時間、6月20時間で7月以降も20時間となることが見込まれる場合は7月1日が資格の取得日となります。
募集時の労働条件明示ルールの変更
職業安定法施行規則の改正を受け、令和6年4月1日より労働者の募集時に明示すべき労働条件のルールが変更されます。
新たな明示事項として、以下が追加されます。
①従事すべき業務の変更の範囲
②就業場所の変更の範囲
③有期労働契約を更新する場合の基準
①は雇入れ直後の業務内容を示すとともに、その後の業務内容の変更の範囲について明示します。
②は①と同様に雇入れ直後の就業場所を示すとともに、その後の就業場所の変更の範囲について明示します。
③は有期契約の場合の更新の有無、更新の基準、通算契約期間・更新回数の上限についての明示が必要となります。
最低賃金全国平均で1000円越えへ
7月28日、中央最低賃金審議会は令和5年度の最低賃金改定について答申をまとめました。
それによりますと、39円~41円を引き上げ目安とし全国加重平均は1,002円となります。
これは過去最高の上昇額となり(昨年は31円)、引上げ率に換算すると4.3%となります。
全国平均で1000円を超えるかが注目されていましたが、目安通りに引き上げがされれば到達することになりました。
介護サービス事業所の毎年の報告が義務化
来年度から介護保険サービスを提供する全ての事業所は、毎年財務状況や従事者数などの報告を行うことを義務付けられることになりました。
現在は3年に一回、抽出事業所のみが報告の対象となっていましたが、毎年全事業所を対象とすることでより正確な情報を集め、業務に支障をきたす場合にスムーズな支援を行うことを目的とします。
定年後の再雇用での賃金減額について
定年後の再雇用で職務内容が変わっていないにも関わらず、基本給が半額以下に減額されたことについての最高裁判所の判断が示されました。
高等裁判所は月額16万円~18万円だった基本給が再雇用後に8万円強となったことが労働契約法20条の「不合理」にあたると判断しましたが、最高裁は正社員の基本給に対して勤続給の性質だけではなく、職務給・職能給の性質も有する余地があるとし、嘱託職員の給与の性質を検討していないと指摘しています。
「正職員と嘱託職員である被上告人らとの間で基本給の金額が 異なるという労働条件の相違について、各基本給の性質やこれを支給することとさ れた目的を十分に踏まえることなく、また、労使交渉に関する事情を適切に考慮し ないまま」不合理と認めたしたとして差し戻しにしました。