労働時間と割増賃金計算の端数処理の注意点
労働時間や賃金計算における端数の処理の誤りから、労働基準監督署の調査で賃金未払いを指摘され、是正勧告されることがあります。労働時間管理や賃金計算がシステム化されている場合は、適法な設計となっているか確認する必要があります。
労働時間の端数処理
①1日単位の労働時間の端数
労働時間は、原則として1分単位で把握しなければなりません。たとえば、始業9時00分、終業18時00分(休憩1時間)の1日8時間労働の場合において、業務終了時刻が18時10分だったときに、15分未満を切り捨てて18時00分とするような処理は違法となります。このような処理をすると1日につき10分、所定労働日数20日とした場合に200分(3時間20分)の時間外労働時間について賃金不払いとなります。ただし、「15分未満は15分」とするなど、残業時間の端数を切り上げて丸めて処理をすることは労働者にとって有利な取り扱いになるため認められています。
また、遅刻や早退の時間数の端数処理をする場合に、5分、10分の遅刻・早退を15分または30分単位で切り上げて処理することは実際の不就労時間より多く控除することになるので、これも違法で賃金不払いとなります。ただし、5分や10分の遅刻・早退について15分未満または30分未満は切り捨て、遅刻・早退0分とする端数処理は労働者に有利となるため問題ありません。
②1ヵ月単位の労働時間の端数処理
賃金を計算する場合、一賃金支払期間における1ヵ月の時間外労働、休日労働および深夜労働に係る端数処理については、当該一賃金支払期間の1日単位の分単位での実労働時間の合計、または①の端数処理による労働時間の合計によることになります。ただし、合計した労働時間数に1時間未満の端数がある場合には30分未満の端数を切り捨て、30分以上1時間未満の端数がある場合には切り上げて1時間として計算することは認められています(昭和63.3.14基発150号)。