休職明けの年次有給休暇の取得義務について
労働基準法上、年次有給休暇は労働者の雇用形態別にその勤務年数に応じて必要な付与日数が定められています。また、新たに年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者については、付与日から1年以内に5日間(繰越分を含む)について必ず取得させなければなりません。
本来、年次有給休暇は、労働者が請求する時季に与えることを原則としていますが、5日の強制取得義務があるため、当該5日分については、会社が年次有給休暇管理簿を作成して、労働者の年次有給休暇の取得状況を確認し、取得していない労働者については会社が取得時季を指定する必要があります。この取得義務に反した場合には、罰則として違反者1人について30万円以下の罰金適用される場合も有りますので注意しなければなりません。
年次有給休暇と休職の関係について見ると、年次有給休暇とは労働義務のある日の労働義務を免除する制度です。他方、休職とは雇用関係を維持しつつ、配属された所属を離れ、労働義務を免除された状態をいいます。休職制度は必ず設けなければならない法的義務はないものの、ほとんどの会社がこの休職制度を設けています。
このように年次有給休暇も休職もともに、本来の労働日について労働を免除されるものであり、、その関係性において行政解釈では「休職発令により従来配属されていた所属を離れ、以後は単に会社に籍があるのとどまり、会社に対して全く労働義務を免除されることとなる場合において、休職発令された者が年次有給休暇を請求したときは、労働義務のない日について年次有給休暇を請求する余地がないことから、これらの休職者は、年次有給休暇請求権の行使ができないと解する」(昭31.2.13基収第489号)としています。
したがって、例えば、付与基準日が4月1日から1年間またはそれ以前から休職しており、期間中に一度も復職しなかった場合などは、使用者にとって5日取得させる義務の履行ができないことになりますので、これをもって労働基準法違反を問われることはありません。